窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

7年ぶり2度目の石川県開催(AIと交渉)-第71回燮(やわらぎ)会

 11月22日、石川県小松市で行われた第71回燮会に参加してきました。石川県での開催は2018年の金沢以来7年ぶり、地方開催は昨年10月の小倉以来となります。

 小松駅に到着し、開場までの間、駅前にある「こまつの杜」で、鉱山採掘に使う巨大なパワーショベルとダンプカーを見てきました。子供の頃、図鑑で見て知ってはいましたが、実物を見ると物凄い迫力で、逆に自分が小さくなったように感じます。

 さて、勉強会のテーマは「AIと交渉」。すっかり身近になり、日進月歩の著しい発展を見せるAIエージェントですが、これを我々が日本交渉協会の中で行っている、交渉の学びにどう活用できるかを検討しました。

 6月に開催した第69回燮会において、僕はChatGPTと音声で対話することによる交渉ロールプレイの可能性を示唆しましたが、正直その時点では到底満足できる水準ではありませんでした。しかしながら、お話しを伺うと、プロンプトの書き方やハルシネーションを防ぐ工夫をすることにより、実用に近づけることができそうでした。

 また、既にAIエージェントで提供されている様々な機能を使うことにより、交渉理論の学習もより分かりやすいものにすることができると思いますし、何より論文など大量のデータの読み込み、さらにはすでに蓄積したデータの活用が格段に効率化できます。たった数年前と比べ、信じられない進歩です。

 なお、実際の交渉でAIエージェントをどう活用するかについては、既にいくつかの研究論文が出ています。膨大な情報処理能力と迅速な分析力を持つAIは、交渉を支援するツールとして期待されています。実際ウォルマートでは、AI交渉プラットフォームを活用し、既に膨大な契約更新を自動処理しているそうです。

 MIT(マサチューセッツ工科大学)で今年行われた国際AI交渉コンペティションでは、AIも人間と同様、より温かみのあるAIエージェントほどより多くの合意に達し、相手にも良い印象を与えることが分かっています。一方、これもまた人間と同じですが、より支配的なAIエージェントほど、自己利益を最大化させようとする傾向がありました。とはいうものの、AIは交渉に欠くべからざる感情や文化的配慮の理解といったことは苦手であることが指摘されています。例えば、マーらの2024年の研究は、LLM(大規模言語モデル)は「面子を立てる」といった文化的コンテクストを把握することができないと指摘しています。

 さらに、いわゆる「ポチョムキン理解」の問題もしばしば指摘されています。ポチョムキン理解とは、AIが言葉の定義など表面的な理解については正しい回答を生成できても、その概念を深く理解して応用するという段になると失敗してしまうという現象のことを言います。普段、生成AIを活用されている方は、身近に感じておられるのではないでしょうか?そして、LLMは外部のサーバーを介するため、情報漏洩のリスクもあります。

 これらの課題も近い将来改善されていくのかもしれませんが、現時点の交渉場面では、AIは人間の意思決定を支援するツールであり、まだ人間にとって代わる段階にないと言えそうです。しかしながら、ウェスタ―マンらの2024年の研究は、AIを中立的な仲介者として活用するODR(オンライン紛争解決)の有効性を示唆しています。

 勉強会終了後、日本一の保有台数を誇るという「日本自動車博物館」へ行ってきました。11年前、「トヨタ博物館」へ行ったことがありますが、そこよりも展示されている車の数は多いそうです。訪問した理由は、ここに元駐日大使のエドウィン・O・ライシャワー博士が愛用したキャデラックの実物が展示されているためです。日本に初めて交渉理論を紹介した、日本交渉協会の設立者、藤田忠先生ハーバード大学で交渉学を学ぶよう勧めたのはライシャワー博士であり、その交渉姿勢は協会が掲げる「統合型交渉」のロールモデルとなっています。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした👘