
5月31日、秩父宮ラグビー場にて、リーグワン2025-26 プレーオフトーナメント準決勝第2試合、埼玉パナソニックワイルドナイツ(リーグ戦2位)対 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(リーグ戦3位)を観戦してきました。この日、隣の神宮球場では、32年ぶりとなった天覧試合の早慶戦が行われていました。真夏のような日差しの中、こちらラグビー場にも、18,695人の観衆が詰めかけました。

お侍と馬の対決。どちらも攻守に優れた似たタイプのチームという印象があります。2022年に発足したリーグワン初代王者であり、その後も準優勝2回という実績を誇るワイルドナイツ。一方、スピアーズは昨年の決勝で東芝ブレイブルーパス東京に優勝を阻まれ、3シーズンぶりの王座奪回を目指します。リーグ戦での対戦は、30vs32でワイルドナイツが勝利しました。

さて、注目のファースト・スクラム。結果はスピアーズのコラプシングによる反則でしたが、概ね両者互角。がっちりと組み合い、微動だにしない姿は、それだけで観客を沸かせます。

最初の得点は前半10分。ハーフウェイラインからややワイルドナイツ陣に入った位置で、ほぼ正面のPGをスティーブンソン選手が決め、スピアーズが先制(0vs3)。

しかし、ワイルドナイツも17分。スピアーズ陣5mライン付近でのラインアウトからモールを形成。これをグイグイ押し込み、コーネルセン選手が右隅にトライ。そして、山沢選手のゴールも決まり、7vs3と逆転します。

高いゴール成功率を誇る山沢選手は27分にも難しい角度でのPGを得ますが、これは失敗。この試合を通じて確実にゴールをモノにしたスピアーズと3つ外したワイルドナイツ。結果的に、この差がじわじわと効いてくることになります。

目まぐるしく入れ替わる攻防の中、36分。スピアーズは敵陣22mライン付近でのラインアウトからモールを形成。ユーズイットで出されたボールをつなぎ、最後はヴァイレア選手が22mを走り抜いてトライ。フォーリー選手のゴールも決まり、7vs10と逆転。そのまま前半を折り返します。

前半の最後の方はややワイルドナイツFW陣の足が止まりつつあるのかなという風に見えましたが、後半先にFWを入れ替えてきたのはスピアーズでした。
10分、ハーフウェイライン付近でのスクラムでワイルドナイツがコラプシングの反則。スピアーズはそこから速攻で敵陣深く攻め込みます。ワイルドナイツも必死のディフェンスでフェーズが重なっていきます。

しかし、ついにゴール目の前でワイルドナイツが痛恨のオフサイド。この試合が最後のレフェリングとなる滑川レフェリーの特徴なのだと思いますが、アドバンテージをかなり長く引っ張る傾向にあると感じました。いずれにせよ、フォーリー選手がこのPGを無難に決め、ワイルドナイツを突き放します。7vs13。

さらに16分。自陣でボールを受けたプレトリアス選手が20mほど左サイドを突破。そしてサポートしていた木田選手へとさらに左へつなぎ、そのまま25mくらい走り切ってトライ。ゴールも決まり、これで7vs20。

しかし、ワイルドナイツもすぐに返します。21分、スピアーズ陣10mライン付近でのラインアウトから、まず後半から出場のウィルソン選手が中央突破。10mライン付近で形成されたラックから左サイドにパスされたボールを再びウィルソン選手が受け、さらに後ろからトップスピードで走りこんできたマースク選手にパス。そのまま40mほど一気に走り切り、ゴール後ろ中央にトライ。これで8点差。
ところが、その後のゴールポスト正面7mほどの位置からのゴールキックをヴァイレア選手が見事なチャージ。一瞬、何が起こったのかわかりませんでした。結果的に、この幻の2点が最終的な点差となってしまいました。それ以上に、ここまでほぼ拮抗していた試合の流れが、これで少しスピアーズに傾いたように感じられました。

そしてスピアーズは29分と31分にスティーブンソン選手がPGを着実に決め、6点を追加。残りあと9分で2トライ2ゴール差となる12vs26。9分あるとはいえ、スピアーズはボールを持って時間を消費するだろうことを考えれば、ワイルドナイツもいよいよ追い詰められたかに見えました。

スピアーズも決して油断したのではないでしょう。守りに入るつもりもなかったと思います。いやむしろ、この点差でもあえて最後まで攻め続け、得点を重ねようという意思が伝わってきました。ボールを保持し続けて時間を稼ぐのではなく、なおも相手ディフェンスの裏にパントして攻撃する姿勢を見せます。しかし、その裏返しとしてボールを手にしたワイルドナイツがここから怒涛の反撃を見せます。
試合時間残り5分。敵陣深く攻め込んだワイルドナイツはゴール正面5mライン付近でペナルティを獲得し、絶好のトライチャンス。巨漢のフィナウ選手がゴール下に突入し、一旦はトライのホイッスル。齊藤選手もドロップキックで直ちにゴールを決めます。しかし、ここでTMO。判定の結果、フィナウ選手の手からボールがこぼれており、ノックフォワード。トライとゴールは認められず、幻の7点となりました。

そして、その前に出ていたアドバンテージが適用されます。オフサイドの繰り返しによりオリヴィエ選手がシンビン。ただ、それをもって先ほどのトライがペナルティ・トライとはなりませんでした。とはいえ、再び5mラインからワイルドナイツの攻撃。そして今度こそ、木原選手が右サイドにトライ。しかし、竹山選手のゴールは失敗。残り2分で17vs26。

残り1分。「之(軍)を死地に陥れて、然る後に生く」(『孫子』九地篇)。追い込まれ必死になったチームの火の玉のような攻撃は、たとえ受け身に回っていたのではなくとも容易に防ぎきれるものではありません。それが戦いというものであり、この手に汗握る展開こそスポーツ観戦の一つの醍醐味と言えるでしょう。ワイルドナイツは自陣からパスを回しながらも縦に縦に、あれほど堅かったスピアーズのディフェンスを突破していきます。あっという間に敵陣に入ると、怒涛の勢いでトライラインへ。そして、ついに齊藤選手がゴールポスト真後ろにトライ。さらにドロップゴールも決め、24vs26。最大14点差が2点差、この間わずか4分。

残り1分。押川選手のキックがミスキックとなりドロップアウト。ハーフウェイラインでワイルドナイツボールの最後のスクラムが組まれます。そして、左サイドにボールを出し、パスをつなぎながら俊足マースク選手のライン際の突破にすべてを賭けます。しかし、これをスピアーズが3人がかりで捕まえて押し出し、万事休す。

来週、国立競技場で行われる決勝は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイとリーグ戦首位のコベルコ神戸スティーラーズに決まりました。圧倒的な攻撃力のスティーラーズに堅い守りのスピアーズ。よく言われる「矛と盾の対決」が楽しみです。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした👘