
5月13日、コミュニティラウンジ「Benten103」にて、第189回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回は「女性の力を最大限に引き出し業績拡大に繋げる経営戦略」と題し、株式会社クーネクスト代表取締役社長、片山砂恵(さえ)様にお話しいただきました。
片山様は美容業界で40年仕事をしてこられ、独立前は美容系FCサロンの本部取締役COOとして200人以上の女性を統括してこられました。その経験を活かし、現在は経営者の理想の会社創り伴走支援、女性個人事業主・キャリア女性のメンター、研修講師などをしておられます。そのキャリアから、現場と経営両方の思考と行動を理解し、双方をつなぐハブ兼翻訳係としての役割を果たしておられるのが特徴です。

- 一部の人に仕事が集中している
- ―管理職が疲弊している
- 感情的(人間関係の)トラブルがある
- 指示待ち社員が増加している
- 意思決定がトップに集中している
- その結果、生産性が低下、売上が上がらない
このような症状がみられる組織はないでしょうか?そのような組織は、人材を活かす設計になっていないという「構造の問題」を抱えていると片山さんは言います。そして、そのような組織構造の問題を何とかするのは、他でもない経営陣の役割です。したがって、今回は「女性の力を最大限に引き出し業績拡大に繋げる経営戦略」と銘打ってはいるものの、男女に関わりなく、構造の変革というあらゆる組織に適用できるお話となりました。
とはいえ、「女性の力を最大限に引き出し業績拡大に繋げる」といった時に、これまでの男性中心の組織では見えにくかった、女性の特徴を把握する必要があります。例えば女性の力を引き出そうと意図し、
- 優しく接すればいい
- 女性が働きやすい制度を整えればいい
- 女性向け研修を導入すればいい
- 女性同士で相談させればいい
というように考え、対処していることはないでしょうか?確かにこれらは必要な要素ではありますが、どれも不十分であるということです。
もちろんすべての女性に当てはまるわけではないですし、男性には全く当てはまらないということではないのですが、概して女性の場合、男性以上に感情、人間関係、現場環境の問題がパフォーマンスに直結する傾向があります。例えば、女性が持つ強みとして、
- 周囲の空気を読む力
- 関係性を育てる力
- 周囲を支える、協力し合う力
といったことが挙げられますが、こうした優れた特質も感情、人間関係、現場環境に問題を抱えていると、強みである協調性や配慮が、環境次第では遠慮や過剰確認、先送りといった形で逆にブレーキとして働くことも起こり得ます。つまり、強みを強みとして生かすためには、感情、人間関係、現場環境に配慮した仕組みづくりが必要であり、しかもそうした仕組みは女性に限らず、組織全体のパフォーマンスを高めるために有効なものです。すなわち、今回のお話は「女性の力を引き出す」といったテーマをトリガーとして、結果的に「組織の力を引き出す」にはどうすればよいかを扱ったものであるということができます。
さて、そのように理解した上で前述のような女性の特質を踏まえれば、彼女たちの力を引き出すために、
- 現場の声を聞く(抽象的な観念では得心しない)
- 雑談も良いが1対1のヒアリングが大事
- ただし、ヒアリングは明確な目的をもって行うこと
- 傾聴と質問の重要性(5W1H質問でその人の思っていることを聞き出す)
- 問題に対しては、解決策を一緒に考える
といった姿勢が具体的に重要になってきます。概して女性は「まじめに働く」、「ルールに従う」、「チーム志向である」といった傾向があるようなので、このような個人に寄り添う対応をすることで、本人に納得感が生まれます。そうすると、「周囲の空気を読む」、「関係性を育てる」、「周囲を支える、協力し合う」といった力が働いて、個々が変容するばかりでなく、チームそのものが変容していきます。
では、なぜこうした「現場に寄り添う姿勢」を強調しなければならないのか?それは、我々がYMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)という、主に経営者側に立っているという前提とも関連しているかもしれませんが、そもそも経営者と現場社員とでは、見ている視座が違うからです。例えば、経営者にとっては理念であるとか、中長期的なビジョンであるとか、自分たちが置かれている時間的・空間的環境の問題といったことが主たる関心事かもしれません。しかし、現場の社員にとってはそんな抽象的なことよりも具体的な目の前の仕事の方が大事。経営者にとって、両者は演繹的に結びついており同じことなのかもしれませんが、現場はそのようには理解できない。そこで、言っていることが伝わらない、かみ合わないといったことが起こります。
この経営者と現場社員とのギャップを埋めるには、抽象概念を現場の具体的行動に変換して伝える必要があります。そうしないと、経営者がいくら声を上げても社員のパフォーマンス向上に結び付きません。そこで、抽象を具体に変換して伝える担当者(中間管理職が担うことが多い。外部の第三者である場合もある)が媒介として必要になってきます。抽象を具体に変換するとは、
- 役割・権限の範囲
- 判断基準
- 報連相を戻す場所
を明確にすることです。そうすることで、社員の判断に迷いがなくなり、自走する組織に変わっていきます。冒頭に述べたような組織の症状は、これら1~3が整理できていないために起こっていると言ってよいでしょう。とどのつまり、「男だから、女だから」の話ではないということです。
因みに、抽象を具体に変換して伝える担当者が「外部の第三者である場合もある」と述べましたが、それは内部の人間だけで行おうとすると、身内ゆえに遠慮や忖度といった集団浅慮の罠に陥ったり、やらなければならないとわかっていても、みな日常の仕事に忙殺されているために後回しになってしまうと言ったことが起こる可能性があるためです。片山先生の現在のお仕事はまさにこの部分の支援であると言えます。
最後に、組織を整えるために重要なこととして、「ゴールから逆算して考える」というものがあります。これは先ほどの「抽象を具体に変換して伝える」を時間軸で見た場合の考え方です。つまり、本質的には同じことですが、理想の未来を描くだけでなく、ゴールと現状のギャップを明らかにし、ギャップを埋めるための行動を具体化、スケジュール化するのです。人は見えない未来のためには動くことが困難だからです。とりわけ女性の場合、「なぜそれを自分がやらなければならないのか?」について納得感を欲する傾向があるため、こうしたことは彼女たちのパフォーマンスに直結します。
さて今回は「女性の力を引き出す」というテーマから、「自走する組織を作るにはどうしたらよいか?」というお話に展開してきました。個人的には、男女を問わず人間社会の営みは結局のところ「感情の問題」なのだという感想を持ちました。その点は、過去のYMS、例えば、第176回YMSの亀ヶ谷正信さん、第139回YMSの長谷川晃大さんのお話しのように、それぞれテーマは異なっていても「人の感情をどう扱うか」に帰着するという点で共通するものを感じました。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした👘
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